
毎日、子供に「片付けなさい!」と怒鳴って、ため息をついているママやパパ、本当に多いですよね。
実は、子供が片付けられないのは、決して「やる気がない」とか「ママを困らせたい」からではありません。
その裏には、子供の脳の成長段階、特に「認知機能」や「遂行機能」といった、片付けに必要な能力がまだ育ちきっていないという、発達上の理由が隠されているんです。

この記事では、作業療法士である私が、なぜ子供は片付けが苦手なのかを専門的に解説し、お子さんの発達段階に合わせた「魔法の声かけ」と「環境設定の裏ワザ」を具体的にお伝えします。
今日から怒鳴る回数がきっと減りますよ!
この記事でわかること
- 子供の片付けのつまずきが、発達のどの段階に起因しているかが明確にわかる。
- 怒鳴る必要がない、具体的で効果的な声かけのヒントが得られる。
- 手間がかからないのに片付く、OT流の環境設定の裏ワザがわかる。
片付けが苦手なのは「甘え」ではなく「脳の発達」が関係している

「片付けなさい!」と言っても聞かない子供を見て、「うちの子はわがままなんだ」と落ち込んでいませんか?
でも安心してください。
片付けができないのは、脳の発達の途中にいる、ごく自然な姿なんです。
なぜ子供は片付けができないのか?OTが解説する3つの理由

子供の行動を、OTの視点から分析すると、片付けがうまくいかない主な原因は次の3つに集約されます。
片付けができない3つの原因
- ゴール(片付いた状態)をイメージしにくい: 散らかった状態から、どうなれば終わりかが見えにくい。
- 段取り(遂行機能)が立てられない: 「何から手を付けて、次に何をすればいいか」という計画が立てられない。
- 注意が移りやすい(認知機能): 片付け中に、別のものが気になって遊び始めてしまう。
1. 作業療法士が解説する「片付け」に必要な2つの機能
実は、「片付け」という行動は、子供にとって非常に高度で複雑な脳の働きを必要とします。
特に重要なのが、「遂行機能」と「認知機能」の2つです。

言葉だけでは難しいことの様に感じますが、詳しく解説していきますね。
片付けは「遂行機能」と「認知機能」の総合動作

実行力を司るのが遂行機能
遂行機能とは、「目標を設定し、計画を立て、それを実行し、うまくいったかを評価する」という一連の機能のこと。
簡単に言えば、「やるべきことをやり遂げる力」です。

片付けはかなり遂行機能が発達していないとスムーズには行えない作業なんです。
| 片付けにおける遂行機能の例 |
| 目標設定: 「床に散らばったおもちゃを、もとの場所に戻してきれいにする」 |
| 計画と実行: 「まずはブロックを全部集めて、次に本を棚にしまう」という段取り |
| 評価: 「これで全部片付いたかな?」と確認する |
情報処理を司るのが認知機能
認知機能とは、周囲の状況を把握したり、記憶したり、判断したりする力です。
片付けでいうと、「どこに何をしまうか」を理解するために必要になります。
| 片付けにおける認知機能の例 |
| 注意機能: 遊びの誘惑に負けず、片付けに集中する力 |
| 空間認知: おもちゃの形を見て、収納ボックスのどこに入れれば収まるか判断する力 |
| 記憶: おもちゃ一つ一つが「どこが定位置だったか」を思い出す力 |
【OTの視点】片付けが苦手な子はこの機能のどこでつまずいているか
多くの場合、子供は「遂行機能」の「計画性や段取り」と、「認知機能」の「注意の維持や記憶」の組み合わせでつまずいています。
「片付けたい気持ちはあるけれど、どこから手を付けていいか分からず固まってしまう」という状態ですね。

大人でもどのように実行して良いのかわからない仕事を与えられると、仕事が進まないのと同じですね。
2. 発達段階別:「片付けない」具体的な原因と声かけの限界

発達段階によって、子供の脳の限界点は異なります。
適切な声かけは、子供の「今の脳の状態」に合わせるのが鉄則です。

これは細かくは年齢別で分けきれません。
個人差が大きい物なので、言語発達の程度、ワーキングメモリーと呼ばれる記憶を活用して行動する力、注意力などによって状態は変わってきます。
ただ今回はある程度の年齢別で紹介していきます。
年齢が進んでいても、自分の子が前の段階でつまずいていると思ったら、前段階にもどってみても良いですね。
【0〜2歳/保育園児】「空間認知」と「記憶」の限界
この時期の子に「片付けなさい」は、そもそも脳が理解しにくい指示です。
- この時期の限界(認知機能): 「物の恒常性」がまだ未熟
- 【OT解説】物が見えなくなると、「元の場所に戻す」という記憶自体が働かず、「存在しない」のと同じになります。
- この時期の限界(遂行機能): 「計画性」よりも「衝動性」が優位
- やりたい!という気持ちが最優先。片付けの目標を維持し続けるのが非常に難しいです。
| NG声かけ | OK声かけ |
| 「全部のおもちゃを、きれいに箱に戻してね」 | 「この赤い車だけ、ママと一緒に入れてみよう」 |
| → 具体的でなく、ゴールが遠すぎる | → 「一つだけ」と具体的に指示し、達成感をすぐに味わわせる |

まずはお片付けの存在に気付かせるために、親と一緒に入れてみることで、遊びの一つとなります。
【3〜6歳/幼稚園・保育園児】「分類」と「注意」の限界
少しずつ「ルール」が理解できるようになりますが、複雑な作業はまだ苦手です。
- この時期の限界(認知機能): 「多すぎる選択肢」にフリーズする
- 【OT解説】積み木、ぬいぐるみ、パズルなどがごちゃ混ぜになっていると、「どこに何をしまうか」という分類作業で脳が疲れてしまい、フリーズします。
- この時期の限界(遂行機能): 「目標維持」と「段取り」が困難
- **〇が終わったら片付けようね」**片付けという目標が遠すぎて、途中で忘れてしまいます。
| NG声かけ | OK声かけ |
| 「そろそろ片付けの時間だよ」 | 「ピッピピッ!タイマーが鳴ったら、ブロックをこの箱に入れるよ!」 |
| → 抽象的な指示で、他の誘惑にすぐ負ける | → 五感に訴える合図(音、歌など)で注意を片付けに集中させる |

我が家ではこの時期には音楽で、「この曲が鳴っている間にお片付けしよう」とお片付けの曲を決めていました。
曲が終わるまでに!というゲーム性も兼ねています。
【小学生】「段取り」と「優先順位付け」の限界

小学生になると「やるべきことは分かっているのにやらない」に見えがちで、ママのイライラは強まります。
でも、ここにもOTの視点が必要です。
- この時期の限界(遂行機能): 「何をどこから始めるか」の苦手さ
- 【OT解説】宿題、明日の準備、片付け…と複数のタスクがあると、優先順位付けが困難になり、結果的にどれも手につかなくなります。
- この時期の限界(認知機能): ワーキングメモリ(作業記憶)の負担
- 「あの時言ったでしょ?」という声かけは、子供に過去の記憶(ルールや場所)を引き出させるという、ワーキングメモリに大きな負担をかけます。
| NG声かけ | OK声かけ |
| 「早く片付けなさい!いつまでぐずぐずしてるの」 | 「まずは、机の上にあるノートを棚に入れよう。次は何をする?」 |
| → 感情的な指示はパニックを招く | → 最初のスモールステップだけ提示し、次の行動を促す |

一つ一つ絞って声掛けをすることが必要かもしれませんね。そのうえで、徐々に子どもに任せてみる。
習慣化してきてできるようになってきたら声掛けを減らしていくという方が良いです。
3. OTが実践する「自分でできる」環境設定と声かけの工夫

OTが大事にするのは、「子供が自立してできるようにサポートする」ことです。
環境と声かけを工夫すれば、子供は自然と片付けられるようになります。
【環境設定編】「片付けやすい仕組み」を科学する
片付けられないのは、子供のせいではなく、仕組みのせい!と割り切りましょう。
「ワンアクション収納」の原則
片付けやすい工夫
- フタや扉がない、「放り込むだけ」の収納が最強です。(例:フタなし、キャスター付き、軽量で移動しやすいものなど)
- 分類が苦手な時期は、あえて「おもちゃ全部」の大きな箱を一つ用意し、考える手間を省くのもアリです。
「指定席を視覚化」する工夫
- 文字ではなく、写真やイラストのラベルで、記憶の負担を軽減しましょう。
- 子供が自分で撮った写真を使うと、「自分のもの」という意識も芽生えやすく、認知もしやすくなります。

これは保育所などでも観察していると使われている方法だと思います。
おもちゃの箱や、棚に写真を張り付けておいて子どもが片付けられる工夫をしています。
「ゾーン分け」と「動線」の意識
- 遊ぶ場所と片付ける場所を明確にすることで、空間認知をサポートします。
- リビングで遊ぶなら、リビングに収納を設置し、「動線」を短くすることで、「戻す」という動作のハードルを下げます。

おもちゃは見えないように押し入れの奥に収納したいなどの気持ちもわかりますが、戻すというハードルを下げることは、子どものお片付けについては重要です。
片付けをする場所と遊ぶ場所があまりに遠いとハードルは上がってしまいます。
【声かけ・習慣化編】「スモールステップ」で成功体験を積む

完璧を目指さず、「昨日よりちょっとできた!」というスモールステップを褒めて伸ばしましょう。
「実況中継」で遂行機能をサポートする
子供が固まっている時は、計画を立てるのを手伝いましょう。
「よし、まずはこの赤い積み木を箱に入れよう!うん、入ったね。次は、絵本を棚に立てよう!」
このように動作を言語化することで、子供は「次に何をすればいいか」という段取りを学べます。
「結果」ではなく「過程」を褒める
「きれいになったね」という結果だけでなく、頑張った過程を具体的に褒めましょう。
「わぁ、ママが手伝わなくても途中で諦めずに頑張ったのがすごいね!」
「最初はたくさん散らかっていたけど、ちゃんと全部を定位置に戻せたね!」

そこまで言わないといけない?と思ってしまうと片付けがずっとストレスになってしまうので、育ちを信じて声掛けを工夫することで、ママも徐々に楽になってきます。
「一緒に」から「一人で」へ移行する声かけのコツ
最終目標は「自分で片付けられるようになること」です。
| ステップ | 声かけの例 |
| 最初期 | 「ママが全部するから、このブロック一つだけ入れてみて」 |
| 慣れてきたら | 「ママは絵本を片付けるから、あなたはブロック全部お願いね」 ママは声掛けだけ。 |
| 自立期 | 「片付けの時間だよ。全部終わったら教えてね」 |
OTが選ぶ「子供の発達を促す」おもちゃ収納7選
イケア商品
トロファストは有名ですが、よく使われているだけあって、頑丈さや色遣い、撮りやすさなど子どもが使うのにはよい商品です。
引き出しも軽いので、おもちゃが重すぎる物でなければ自分で片付けることもできて、前方に写真が貼りやすいのもメリットです。
トロファストでは明らかにおもちゃ収納で気になる…という人には、グールスケンのようなタンスを使って隠してしまうのも手です。
ただ、写真を貼ってしまうとデザイン性は失われますね。

写真管理が必要な期間は長くはないので、写真をしっかり貼ってしまうのもありかなって思います。
子どもは見えないと何がどこにあるのか?というのを記憶できない可能性は高まります。
小学生に近づいたくらいの段階で、開けたところに写真がある、もしくはどこでもいいから入れちゃおうという収納の場合は活用できます。
ただ、価格がかなり安く、おもちゃ収納が終わったとしても使えるデザインは魅力的ではあります。
カラーボックス
カラーボックスは定番ですが、ニトリの物はキャスターをつけられたり、扉付きタイプや引き出しのように使えるボックスなど様々な付属品があるのが魅力です。
カラーボックスは価格も安いので、取り入れやすいですね。
おもちゃ収納としての商品
おもちゃ収納としての商品ももちろん、子どもにとっては使いやすいです。
おもちゃ収納の利点は、箱を収納したときでも上から確認できる隙間がしっかりあることです。
子どもが見やすく取りやすい工夫がされているので、これ一つあれば、おもちゃ管理は楽になります。

デザインがシンプルならば大きくなっても使えそうです。
カラーボックスの引き出しタイプはレールに入れるのが難しくても、置くだけならこどもも扱いやすいです。
キャスター付きボックス
キャスターがついて簡単に移動できて、入れるだけ。
結局はこれが一番使いやすいのではないかと思っています。
いっぱいは置けませんが良く使うおもちゃはこういった収納がおすすめです。

おもちゃにはその時のブームがあるので、定期的に入れ替えるなどの工夫でも片付けやすくなりますね。
結論:焦らず、子供の「発達の道筋」に寄り添うことが大切

子供が片付けられないのは、成長の途中にいるからです。
「片付けなさい」という言葉は、子供の脳のキャパシティを超えているサインかもしれません。
怒鳴ってしまう自分を責めずに、まずは「仕組みを変える」「声かけを変える」という外側からのアプローチを試してみてください。
発達のプロであるOTが提唱するように、焦らず、子供の「発達の道筋」に寄り添い、小さな成功体験を積み重ねることが、片付けができる子への一番の近道です。
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